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初恋 9

Author: 煉彩
last update Last Updated: 2026-01-11 09:36:02

 黒崎さんのマンションに着き、タクシーを降りる。

 タワーマンションと言うのだろうか、三十階以上はあるように見えた。

 田舎から出てきた私にとっては、一度は住んでみたいと憧れを抱くような高層マンションだ。

 こんなところに住める黒崎さんって、すごい人なのかな。

 彼のうしろを歩き、マンションの中に入る。

 暗証番号のようなものを彼が入力すると、エントランスのドアが開いた。

 エントランスには管理室のようなところがあり、中は見えなかったが電気がついていた。

 エレベーターに乗り、彼は二十五階のボタンを押す。

 エレベーターを降りるとホテルのようなタイル張りの長い廊下が続いていた。

 彼が

「ここです」

 そう言って、部屋の鍵を開ける。

 スマートキーかな、スマホをかざしたら部屋の鍵が開いた気がする。

「お邪魔します……」

 頭をペコッと下げて、一歩部屋に入る。

 私たちが部屋に入ると、電気も自然とついた。

 とても綺麗な玄関。

 こんな綺麗なお部屋に私が入ってもいいのかな。

 茂みに押し付けられてたから、草とか土が洋服とかについてるかも。

「暗くてよく見えませんでしたが、転んだところから血が出ていますね。早く消毒をしましょうか?」

 黒崎さんに言われて、あらためて自分の姿を見る。

 自分の姿を見ると、草はついているし、膝に砂はついているし、血は付いているしで最悪な姿をしていた。

 こんなカッコで家に入ったら汚しちゃうよ。

「よごし……」

 汚しちゃいそうですと言いたいが、声がかすれる。

「そんなこと気にしなくていいですから」

 私が何を言いたいのか、黒崎さんはわかってくれたみたい。

 優しく彼に手をひかれて、部屋の中に入る。

 物が少なく、清潔感のある部屋。

 あまりにも整いすぎていて、生活感があまり感じられなかった。

 黒と白、落ち着いた色でインテリアが揃っている。

 物が多く、ごちゃごちゃしている私の部屋と大違いだ。

「ソファに座ってください」

 リビングにある四人掛けくらいの大きなソファに案内をされる。

 汚してしまうかもしれないと思いながら、彼の指示通りに座った。

「ちょっと見せてください」

 黒崎さんは心配して声をかけてくれたんだろうけど、羽織っている彼のスーツを脱いでしまうと服が破られてしまっているため、下着が見えてしまう。

「あの……」

 私が躊躇していると

「すみません。配慮が足りませんでした」

 彼は何も悪くないのに、謝ってくれた。

「着替えを持ってきますね。と言っても、男物しかないので、美桜ちゃんには大きいかもしれないですけれど」

 そう言って彼は立ち上がろうとした。

 しかし

「傷口を流水で流さないといけません。もし良かったら、シャワーを使ってくれていいですから。結構、広範囲に渡って擦り切れてしまっているので、洋服のまま入ると、服まで濡れて風邪をひいてしまいます。傷口が沁みて入るのも大変かもしれないですが、何か手伝えることがあったら言ってください」

 彼の指示にうなずく。黒崎さんの言う通りだ。汚れてしまっているし、シャワーを借りよう。

 浴室に案内される。

「ゆっくりでいいですからね」

 彼が出て行く。

 バスルームもホテルみたいに綺麗だな。私のアパートと比べたら失礼だけど。

 私は洋服を脱ぎ、シャワーを浴びる。

 傷口を流水で流した。

「い……」

 かなり痛い。

 身体の至るところが沁みた。

 お風呂場から出て、彼が持ってきてくれた服に着替える。

 さすがに男性物だったので、大きい。

 黒崎さんのところに行く前に身なりを整えようと、鏡を見た。

 顔も少し沁みるところがあったため、擦り切れているのだろうかと自分の顔を見たとき、首に赤い痣のようなものがあった。

 これは、どうしたのだろう。

「あ……!」

 押さえつけられた時に、強く握られ、内出血したのだろう。

 恐怖が蘇って混乱し、その場に座り込んでしまう。

 落ち着いていた涙も再び溢れ出してくる。

「美桜ちゃん、何かありましたか!?」

 出てこない私を心配して、黒崎さんがバスルームの前から声をかけてくれた。

 返答をしない私を心配して

「ごめん。入りますよ」

 首を押さえ座り込んでいる私を見て、黒崎さんも動揺している。

「どうしましたか?痛みますか?」

 黒崎さんは眉が下がり、心配しているといった顔をしている。

 そんな顔をされたら、従うしかない。

 私は隠していた手を下に降ろした。

「……!」

 黒崎さんは私の首を見て、何も言わなかった。

 どう思われたのだろう、不安で仕方がない。

 黒崎さんは無言で立ち上がり、バスルームから出ていく。

 彼が何かを持ってきて、首に貼った。

 手で触ると絆創膏だとわかった。

「これは、傷だから治ります。こんなことされて、怖かったですよね。もっと早く駆けつけられなくてすみません」

「黒崎さんが悪いわけじゃ……」

 黒崎さんの泣きそうな顔。この人は、本当に私のことを心配してくれているんだろうと心から感じた。

 私も涙が止まらない。

 そんな私を彼はうしろから優しく抱きしめてくれた。

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